新潮文庫
\476(税別)


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志村正順という人をご存知だろうか。知っている人はおそらく還暦を過ぎた方と思います。元NHKの名アナウンサー。私は子供の頃よく父親と寝っころがって真空管ラジオから流れる野球や相撲の中継に聴き入ったものです。野球は「志村正順と小西得郎」、相撲は「志村正順と神風正一」がお決まりだった。しゃべりの上手さは天下一品、しかも豊富なサービス精神、ドラマ性や躍動感溢れる語りはアナウンスの真髄であった。ラジオから離れられなくなってしまう。小西得郎も神風正一も志村正順が直接スカウトしたのだそうだ。この本はそんな志村正順の大正2年に始まる一代記である。
今の野球中継はありゃなんだ。某民放では解説者が6人も7人もいてもまともな解説者は一人も居ない(特にFテレビ)。試合終了までに一言しか発しなかった解説者もいた。それでギャラをいただけるなんて、いい商売です。アナウンサーもレベルが低すぎ。あの程度のアナウンスなら素人の私にだって出来る。アナウンサー一人、解説者一人でいいのだ。解説者を増やすよりテレビカメラを増やせ。アメリカ大リーグの中継には日本の3倍のテレビカメラが投入され、その魅力を余すことなく伝えてくれる。
名勝負は名アナウンサーによって伝えられる。もう一度「志村・小西」の中継を聴きたい。